観戦せざる観戦記

プロの将棋をもとに考えたもの

山崎隆之 八段 vs. 豊島将之 八段 第38回日本シリーズJTプロ公式戦 決勝

第38回日本シリーズJTプロ公式戦 決勝

山崎隆之 八段 vs. 豊島将之 八段

この将棋は、とてつもなくおもしろかった。

そして、私はつい先日書いたことは間違っていなかったと思いました(その内容は最後で)

まずは下図。先手は一歩損していますが、馬を作っているので互角でしょう。

ただ、厚い馬がいい感じですね。

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続いて下図。狭い先手の銀を狙う一連の構想は?(4段以上)

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正解は△1五歩。

ここで歩をとって、5五に打つのが狙いです。

 

それが実現した下図。先手の手は?(5段以上)

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正解は、▲6七銀!

この銀を、6六の歩でとらせるのが、いいんですね。

これにより拠点を消すことができます。

いわれれば気づきますが、なかなか自力では発見できない手です。

 

さて、とはいえ、後手に攻め込まれている下図。先手はどう指したでしょうか(山崎レベル)

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正解は▲4七角!

これが最善かどうかは分かりません。

いかにももったいないですから。

でも、山崎八段はこれが必要だと感じたわけです。

落ち着いた頑張り、という感じがします。

 

さて、角が当たっている下図。先手の次の手は?(6段以上)

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正解は▲6四歩。

角を取らせる間にと金を作るわけです。

まさにギリギリのタイミングです。

 

さて、後手のと金が迫っていますが、先手は?(プロレベル)

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正解は▲5九銀!

これで銀を取らせながら飛車を通して、一手稼いでいる感じです。

背後からついている感じがして、山崎八段の静かな強さを感じます。

以前だと、もっと粘れなかったような気がします(あくまで私の主観)

 

さて、下図となって、先手の手は?(山崎レベル)

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正解は▲1六歩。

この普通の手がなぜ山崎レベルかというと、先手はこの後、端の香を捨てて、下図を作ったからです。下図をご覧ください。

何をしているのかさっぱりです。

後手の王は特に狭くなったという感じもしません。

それに、経験があると思いますが、こういうあと一枚という形は、決してその一枚が追いつかないのです。私は、先手がダメだと思いました。

もっとも、ここで先手はどう指したでしょうか?

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正解は、▲4五飛車(下図)

飛車を切って、銀をとりました。

一見厳しい。しかし・・・これは詰めろでも何でもないのです。

後手は詰めろをかければ勝ち。

というところで後手が指したのは?

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正解は、△同桂。(下図)

どういうつもりでとったのかはわかりません。

私の予想ではこうです。

後手玉は寄らない。あと一枚がどうしても足りない。それであれば、この飛車もとっておこう。この飛車が生きていると▲4四飛車のような手もあるから。まあこれで安全がちだな。

このように考えたのではないかと。

さて、下図で先手はどう指したでしょう(5段)

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正解は▲9三桂成!(下図)

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恐るべきことに、これが詰めろ。しかも受けなし!

先手玉は・・・ほとんど王手がかかりません。

もうどうしようもありません・・・

こうなることがわかっていれば、後手は同桂のところで、△8六銀を発見することは容易だったでしょう。

しかし、できなかった・・・

 

もちろん、豊島八段の見落としではあります。

しかし、この逆転は、山崎八段がぴったり追走したその成果だと思います。

本当にしぶとかった。

私は、先日、失礼を承知で「山崎八段は強くなられたのではないか」と書きました。

その意をますます強くしたものです。

前期山崎八段がA級を逃した時、ネットで「山崎はB1が限界」というコメントを見ました。私は肯定も否定もしませんでしたが、厳しい意見だと思いました。しかし今は、A級に上がりうると強く思います。